『図書館戦争』

図書館戦争

図書館戦争

大分前に友人から借りていたにもかかわらず、ハードカバー→持ち歩きづらい→通勤時間に読めない ということでなかなか読めなかったのですが、土曜日に一気読み。ツボに入った。


多分普通に読んでも面白いとおもうのだが、図書館学をやった人間にはさらにツボに入ること間違いなし。事実貸してくれた友人(某国立大学の司書)の職場でも流行っているようである。


非常に幅の広い解釈が可能な「メディア良化法」が成立し、法務省管轄のメディア良化委員会が「検閲」を行う社会において、それに対抗するのが「図書館の自由法」を成立させ、資料収集の自由を行使する図書館(図書隊)。


「検閲」と「収集」の戦いは、文字通り銃器までもを使用した戦闘。「一般人に迷惑をかけず、図書館の敷地内であれば戦闘による殺人も超法規的に認められる」という設定はまさに「ありえない」。


が、実はこの話、たんなる「ありえない」設定でのぶっ飛び話かというとそうでもなく、なんとも含蓄のある骨子を非常なるブラックユーモアでくるんでジョークに仕立てた、なかなか考えさせられる話である。


そして、この物語の前提「メディア良化法」成立のくだりなど、本当に現代日本で「ありえない」か?突き詰めて考えると寒くなる問題提起かも知れない。


とは言え決してカタイ本ではなく(設定を見てカタイと思うわけもなかろうが)、全体的にはコメディありロマンスもありで、純粋に物語としても面白いと思う。


主人公郁は、高校時代「検閲」によって奪われそうになった本*1を「見計らい」で取り返してくれた図書隊員に憧れ、自らも戦闘員としての図書隊入隊を決意*2。厳しい訓練に明け暮れるところから物語が始まる。


やがて、女子での史上初特殊部隊員となった郁は、時に優等生同期手塚といがみ合い、「検閲」と戦い、にきびに負けず図書業務を覚え…と日々成長していく。のだが、この主人公タダゴトでない。


まず、戦闘訓練をし、階級章のある「隊」に所属しながら、教官相手にドロップキックをかましている。(そして腕ひしぎを食らう)


また、とにかく感情的で子供っぽく、かつクチが悪く、殊に衝突の多い上記教官(堂上教官)へなど平気で、罵詈雑言もあびせかける。まぁ社会人としてこれだけありえない人間は、流石物語の主人公。


といっても決していいトコなしなわけもでない。身体能力が高く、元陸上部の足は男子を凌ぎ、ロープでの降下訓練では「山猿(本文より)」のごとき俊敏さを見せる。


また、意外に乙女回路なところもあり、憧れの図書隊員を「私の王子様」呼ばわりし(が顔は覚えていないというオチつき・笑)、子供特有の潔癖さと紙一重ではあるものの、まっすぐで純粋な熱血漢(まさしく「漢」・苦笑)である。


見ていて、時に「痒く(本文より)」時にその潔癖さがハナにつき、時にその子供っぽさが腹立たしい主人公であるが、総じていえばイイヤツである。


個人的には、途中から人柄の見えてきた手塚や、郁の親友の柴崎などが結構スキなのだが。後、「正論好きだから優しくないよ?」という小牧教官も。大人ですよね。。


まぁともあれ、面白かったので早速貸してくれた友人に報告→続編があると聞き早速、
『図書館内乱』

図書館内乱

図書館内乱

を買いに行く。こちらも即日読了。さらに劇中本もあるというので、本日探して購入。どこまで期待に応えてくれるのか楽しみ。

*1:「検閲」とは、メディア良化委員会が「不適切」と判断した図書を書店などから強制撤去すること。場合によっては、図書館の保存する資料も「不適切」であるため、資料破棄を求め、文字通り図書館に攻撃を仕掛ける。要は焚書デスネ★

*2:非戦闘職種の図書館員というものもいる