『涙そうそう』

涙そうそう (幻冬舎文庫)

涙そうそう (幻冬舎文庫)

CMを見て、映画が見たくなったものの、映画館に行くだけの余裕がなかったため小説版を購入。
「ツマブキの泣き顔っていいなぁ(整った顔の人は泣いても絵になるなぁ)」とか考えながらページを開いた。

ヨウタ(妻夫木聡)は沖縄島育ち。「ヨウタの妹になるんだよ。だから大事にしなきゃだめよ」と母・光江の再婚で出来た妹(継父の連れ子)、カオル(長澤まさみ)を子供心に大事にすることを決意。

父と妹ができ、家族4人の楽しい生活が始まる。しかしそんな生活は長くは続かず、やがて父が出て行き、親子3人暮らしになる。

光江は懸命に働き、子どもたちを育てていこうとするが、病に倒れる。自らの命が残り少ないと覚悟した光江は、ヨウタに「ひとりぼっちのカオルを守ること」を約束させ、「涙が出そうになったときのおまじない*1」をして、この世を去る。

二人残された兄弟は、親切な親戚の家で養育されるも二人だけの絆をより一層深めながら育っていく。

本当の妹ではないと知りながらカオルを誰より大切に守っていくヨウタと、おぼろにそうでないかと知りながら誰よりも「兄ィニィ*2」を頼り信頼しているカオル。やがてヨウタの本島進学、退学、就職、恋愛と、いったんは離れる二人だが、カオルの進学と共に同居を始め…という話。

ストーリーとしては、スタートはいいものの、途中から妙にどたばたとドラマチックな展開を詰め込みすぎた感がある。が、やっぱりタイトルどおり泣ける。

ヨウタがホントにいい人間であり、兄であり、男である。お人よしで、だまされやすくて、時々いじけて。でもこんな人が「大事にする」っていうのは、ほんとのほんとにすごくて強いのである。

全編通してキーワードは「泣かないおまじない」と「兄ィニィ」。要所要所に出てくるこれらに、泣かされる。

*1:涙がでそうになったら鼻をつまむ。すると涙が止まる

*2:兄の意味。沖縄方言(?)のようだが、私はこの単語がすごく気に入ってしまった。この物語の雰囲気にまさにぴったり