『死後の恋』

日本幻想小説傑作集 (2) (白水Uブックス (76))

日本幻想小説傑作集 (2) (白水Uブックス (76))

私はこれ↑に収録されているものを読んだ。が、この作品自体については以下参照。
死後の恋 (ふしぎ文学館)

死後の恋 (ふしぎ文学館)

大学1か2年頃、大学図書館で新書は持ち運びしやすいという基準で選んだ。その後「そういやあの話、どこで読んだんだ?」と探していたが、「ロシア人兵士の話だったような…」という記憶からロシア人の作品を探していた+うろ覚えの題名を『「死霊」の恋』と記憶していた*1ため見つからず。本日、日本人作の「ロシア人ワーシカを主人公とする」『「死後」の恋』を発見。やー記憶って曖昧だ(笑)
ウラジオストックで一人の「キチガイ紳士」(本人がそう名乗る)が日本兵に語る、ロマノフ王朝の末路と自らの体験談。
24歳ながらとても20代には見えない元ロシア兵のワーシカ・コルニコフは、「あの時から老け込んでしまったのです」と語る。革命や戦争の荒れ狂うロシアで、元貴族青年ワーシカは兵士となり、元は同じく貴族であろうリヤトニコフと気の合う友となる。そんなある日、リヤトニコフに見せられた見事な宝石に、「僕だからよかったもののこんなものを他人に見せてはいけない」と注意しつつも欲に目がくらむ。「リヤトニコフが戦死でもすれば…」と考えついて行った伝令任務中、敵に襲われワーシカは負傷。リヤトニコフは必死に彼の元に残ろうとするが、結局他の仲間と森へ逃れることに。気がつけばあたりは不気味に静まり返り、ようやく森にたどり着いたワーシカが目にしたものは… という話。
要は「森に逃げ込む」までが敵の罠で、仲間は惨殺されコルニコフ一人が生き残ったという体験談。しかし、仲間の凄惨な遺体に加えてワーシカを打ちのめしたのは、リヤトニコフの正体だった。空砲で宝石を腹に撃ち込まれ、木から吊るされた「彼女」を見たとき、初めてその真意知ったワーシカ。しかも、同時に彼は遅すぎる恋をした…
薄暗い。なんて薄暗いんだっ!という話。没落した王家の末娘が、持参金である宝石だけを隠し持ち兵に身を窶す中、恋をする。ココまではいい。が、自らの秘密を打ち明ける一大決心の前フリ(宝石を相手にだけ見せる)で、相手は宝石に目がくらんでいるし、敵襲の中彼を助けようと必死だったのに離れざるを得ず、更に結局自分は「戦場の常」的扱いの上、両親の心づくしを惨殺の小道具にされる。さらにここまで来てようやっと真実に気づいた相手が今更…+そのせいで半ば壊れてしまう。って不幸すぎじゃないか??それでも、作品を読んでみると確かに「幻想」という雰囲気。ちょっと怖いけど、不思議に印象的な作品。
しかし、「幻想」ってファンタジーのイメージで手に取った本だったのに…もう記憶もあやふやだが、ほとんど全部薄暗い話だった。「幻想ってそっちかい!」と思ったような覚えがある。

*1:『死霊の恋』も実在する